スマイルプリキュア映画感想文【笑顔に会いたい】

プリキュア5の映画第一作である「鏡」はよく考えられていたんだと思ったというのが、見終えた直後の感想でした。
主人公格が5人いる物語、かつ35,6話の時点の情報までをもとに製作すると考えた場合、自分達の影を出して影との対話を行うのが各キャラの個性を映画で見せられるいい脚本なのかなと思いました。

☆全体像という名の好き放題なあらすじ感想

今回の始まりはみゆきの幼少時代の回想から始まります。小さいころのみゆきは自分から話すことが苦手な子供でした。
しかし、児童館で古本として処分されそうになっていた絵本によって、みゆきは笑顔の大切さを知り人と話すことができるようになりました。
その本は途中で破れていて続きがありませんでした。みゆきはその本の続きを書くことを約束します。


時は経ち……ご存じのとおりみゆきは七色ヶ丘中2年生でキュアハッピーという状態。
スマイルプリキュアの作風上年がら年中遊び呆けているので今回も彼女達は絵本をテーマにした催し物にきているという次第。OPでは楽しくその中で遊んでいる様子が止め絵で映し出されます。


OP明けすぐに場末にあるテントに入ることになります。絵本の世界に入れるという触れ込みですが、3Dではないようで日野さんからは別の場所に行きたいという声も。ただ、滅茶苦茶こんでるイベントではないようで、順番に行けばいいよ。という至極まっとうな意見でテントの中へ。

テントに入ると映画が始まります。何者かに追われる女の子の話のようです。追跡が厳しくもう捕まるという刹那、女の子は画面からみゆき達の前に現れます。当然驚くみゆき達ですが、その暇も無く女の子の追手が迫ってきます。ここで変身。じゃんけんは当然チョキ。

追手は西遊記の金角銀角でした。彼らはヒョウタンの中に女の子を閉じ込めようとします。一度は捕まってしまうものの、30話以上の戦闘をこなしたスマイルプリキュアさん達は以前とは比べ物にならないほど強くなっていました。無事、ヒョウタンから女の子を救出。
この女の子はニコというらしい。



助けてくれたお礼に、ニコは絵本の世界に招待してくれると言いだした。当然みゆきは二つ返事で付いて行き、仲間もそれに同意してワープ。たどり着いた絵本の国は絵本の登場人物たちが暮らしているという話だが、キャンディの出身国のメルヘンランドとはまた違うらしい。多くは語られていないが。

メルヘンランドでは登場人物になりきって遊ぶことができるようで、みゆきは喜び勇んでシンデレラをチョイス。他の4人も思い思いの絵本の主役を熱望。
キャンディは考えてるうちにみゆきと一くくりにされてしまった……。
シンデレラと言い切ったみゆきの態度が癪に障ったのか、ニコの声が可愛くなくなってきました。


絵本の世界の中の主人公になりきってストーリーを追体験していく4人はみんなノリノリです。この子たちのこういうところは本編とブレてなくてよかった。
しかし、追体験もそう長くはさせてもらえないようでシンデレラを訪ねてきたのが魔女ではなく桃太郎だったことを皮切りに、サブタイトルにもなっているように絵本の中がチグハグになり始めます。ちょいちょいニコちゃんのカットが挟まれる毎に状況は悪化。


遂には得体のしれない黒い影に取り込まれ、「本来の目的を果たせないのはみゆき達のせい」という洗脳状態に陥ってみゆき達を追いかけまわします。雲行きも怪しくなってまいりました。逃げながら4人は合流。本日二回目の変身。


得体のしれない力で襲いかかってくる主人公勢は強く、みゆき達も奮闘しますが勝負は劣勢。そこへ本来であれば絵本の敵役の牛魔王+鬼2人がプリキュアを援護します。
「べ、別にあんたのためにやってるんじゃないんだからね!」(本当)


やっとの思いでシンデレラ(当社比3倍)の洗脳を説いたところでニコ登場。
「みんな、絵本の世界を楽しんでる〜?」

おまえは何を言ってるんだ?というテンションのプリキュアさん達に、ニコはここでネタばらし。アバンで語られていた絵本の主人公が、ニコ。みゆきは続きを書くと約束しながらも、それを放置した。だから、絶対に許さない。みゆきなんて大嫌い。みゆきの好きな絵本なんて滅茶苦茶になればいいんだ。


みゆき以外の4人にとってはなんのこっちゃと言う話ですが、みゆきにとってはこれ以上ないショック。完全に放心状態です。


言いたいことだけ言って去っていったニコを追いかけろ、ここは俺たちに任せて先に行け、と牛魔王プリキュアさん達を投げ飛ばします。ケモナー歓喜の男気w

プリキュアさん達が飛ばされた先は、暗い町。住人同士がいがみ合いすぐに喧嘩を始めてしまう町……。しかし、この街こそがニコの絵本の中に出てくる町でした。みゆきは事の成り行きを皆にも説明します。しかし、説明したところで状況は変わらないので罪悪感で押しつぶされそうになるみゆき。こんなみゆきは見たこと無いですね。はい(棒)


しかし、そんなみゆきを優しく諭すのは意外にもサニキこと日野さん。意趣返しでみゆきを元気づけます。まぁ、mktnのみたいにビンタは無いとは思っていましたが。
とにもかくにもニコのところにみゆきが行くしかありません。言って謝り倒すしかない。
ある意味、ここはASNSでのあゆみちゃんがやったことをみゆき自らが経験するようなもんでしたね。多分、みゆきはその時の出来事は忘れてるんじゃないかと思いますが。


森や岩場を通って、プリキュアさん達はニコのいる魔王の城へ行くことになります。
ニコはニコで過去の事を思い出しています。魔王囚われたまま終わりがない物語に迷い込んでしまったこと。魔王の力を借りてでもみゆきに復讐を燃やしている事……。


遂に魔王の白の前でみゆきとニコは向かい合います。
体を直角に曲げ謝るみゆきに対して、ニコは許す気などないと再び絵本の主人公達をけしかけます。牛魔王さん達は結局負けていたようです。
4人は主人公達を引き付け、みゆきをニコの元へ行かせようとします。この辺りは20話近辺の展開と似たような展開。
今回の敵は世界征服などという漠然とした目標ではなく、ただ「星空みゆき」を悪として滅ぼそうとする敵。そのためなら何でもします。

「恨むんならみゆきを恨むんだな」(大意)
それに対し4人は「好きだから、友達だから恨むなんてとんでもない」みたいなことを口々に言いだします。まぁ、正直この5人の人間性の描写が足りているかは別としても、このようなステージまで引っ張り上げたのは間違いなく星空みゆきなのでこの手のセリフに対しての違和感は無いかなと。

満身創痍ですが、みゆきはニコの元へ到着。ニコを抱きしめ精一杯謝ります。
「私に笑顔を教えてくれたのは、ほかでもないあなただ」
ここで「いいや、絶対に許さない!」となってどちらかが死ぬまで戦うようなことになると、月影ゆり姉さんの誕生なのですが、本作はスマイルプリキュアなのでニコもみゆきの真摯な態度に心を開いてゆきます。

しかし、そうは言ってもまだ残りの時間がかなり余っているので、もう一人の敵である魔王が出張ってきます。魔王からしてみれば、ニコとはみゆきを倒すために共同戦線を張っていたのに裏切られてしまった格好になります。さすがに、それはひどくね?とニコを手中に収めようとします。


囚われてしまったニコを助けようとプリキュアさん達と牛魔王さん達は魔王に近づこうとしますが、ラスボスなので攻撃力が高く一発もらうとダメージが大きいようです。
ニコの心はこの段になってもまだ揺れています。まぁ、みゆきか魔王かどちらをとるか……ということではなく自分の気持ちはどうなのかということなのでしょうが。

「なんで、あなた達を困らせた私を助けるの」と助けに来た牛魔王とキャンディに問うニコ。
それに対し牛魔王は「そんな泣きそうな顔して何言ってやがる」
キャンディは「ニコの本当の気持ちはどうなんだ」と良いセリフを吐きやがります、この獣たちはw


ニコは今まで持っていた「待ち」の考え方から「攻め」の考えにシフトしたことにより、状況は好転。プリンセスフォームからの必殺技の流れを可能にしました。しかしながら初期起動時のピエーロ様を撃破できたフェニックス砲も、魔王相手には通用しませんでした。

戦闘不能に陥るプリキュアさん。せっかく「攻め」の思想に転換しても、登場人物の一人である魔王が強権を発動して物語を「待ち」すなわち今までどおりの「停止」状態にしていては状況は変わりません。しかし頼りのプリキュアさんは沈黙……。

はい、そこで今回ご紹介するのがミラクル翼ライト。
これにスイッチを入れ左右に振ると……あら不思議。
物語に思い入れのあるヒーロー一人が強化形態になって再登板します。


「笑顔で包む、愛の光、ウルトラキュアハッピー……」


……仕方ないね、正直このフォームに覚醒すること自体星空みゆきの中ではNGだったのかもしれないね。これが現実世界での覚醒だったら、もっとテンション上がってフリーザ第2形態とピッコロが手合わせした直後の悟飯みたいに「!!!!」とかついちゃうかもしれないけどw
意図的でないとはいえ、完全に「星空みゆき」個人の責任で起きた出来事だからね。

ウルトラキュアハッピーは特に必殺技は無いけど、地面に触れた瞬間に割れた大地を緑であふれさせる程度の能力と、魔王を触れただけで浄化できる程度の能力を持っています。
それが歴代のプリキュアと比べてどうとかという話ではないことだけは確かです。

破れてしまっていた絵本に白紙のページが戻り、そのページの内容はその主人公である自分達が描いていくんだという、スマイルプリキュアの6話ぐらいでポップ兄が言っていた事と同様の思想が最後に出てきます。
結局、みゆきもニコも自分達の立場というものは同じだったんですね。

大嫌いと言っていたニコの本当の気持ちは大好き。まぁ、例外もありますが強い想いという意味ではこの辺は同一なのかなと思いました。
そんな流れのみゆきにスポットを当てたお話でした。


【細かい感想】

全体の流れに関しての突っ込みやらなんやらは、上記でやらせていただいたので大きく気になった場所を3つほどピックアップして語りたいと思います。


・みゆきに対する4人の評価はバラバラでもよかった。

「恨むんならみゆきを恨むんだな」というようなニコのセリフを受けて、4人はみゆきの事が好きだから恨むなんてとんでもないという旨の発言をしました。
しかし、ここでは4人ともみゆきに対してただただ無条件に好意を持っているという言葉を並べています。ここはスマイルプリキュアという5人組が他のメンバーを普段どういう思いで見ているのかがわかるいいシーンだったので、ボキャブラリーの無さが残念だと思いました。

この辺は今後の最終回近辺で嫌というほど見せる予定があればいいのですが、それも無かったらこの5人は一体どんな友人関係なの?って事になるかもしれない。


牛魔王が目立ち過ぎていた
今回の映画、登場キャラクターが多く主人公達も存在が霞んでいる方がおりました。そんな中、物語のキーマンでもラスボスでもない牛魔王の存在感が半端じゃなかった。
確かに、かっこいいし面白いんだけど本来の主人公達の見せ場を作らずに、安易に動かしやすいキャラクターに頼ったのではないかという感が払拭できない。


・ウルトラキュアハッピーとは何だったのか。
これを言っちゃうと話のコンセプトから変えなきゃいけないからあまり言いたくないけど……。

「ウルトラキュアハッピー」は元気一杯で名乗っていただきたかった。

今回の映画でいちばん違和感があったのがこの辺りだったりする。