トロピカルージュプリキュア感想文

「今年度の視聴にあたって」

 

皆さん。約一年ぶりになりますが、社会的には何にも変わらずコロナウィルスが世の中を席巻して、新しい生活様式と今までの生活様式が混沌を極めている中でいかがお過ごしでしょうか?

私は個人的に去年は大きな手術などは無かったのですが、体の不調で病院と家を行ったり来たりの生活を送っていました。でも、プリキュアに関しては録画対応などで完走できたのでその事は例年通りだったと思います。最近はライダーも戦隊も全く見てないのでせめてこのコンテンツだけは継続していければいいなと思っています。

 

さて、前年度のヒーリングっとプリキュアの感想文は下記参照なのですが、今読み返しても文句タラタラで今年度のプリキュアに対しての期待感も当時はかなり低い感じでした。

とりあえず最初から分かっていたこととして、比較的日本でいうところの南の島周辺の海洋地域が舞台となる事と、とにかく明るく楽しい作品を作りたいという事が挙がっていたので「今作は海の自然環境に対するお話か……あるいはスマイルの時みたいなキャラクターの個性でゴリ押しをしていく感じなのかな」と、もう数年以上プリキュアを鑑賞している身としてはどうしても過去作や現代の社会事情を頭に入れながら開幕直後までを見ていました。

 

2022年版「幸せな人魚姫」

 

本作の主人公もシリーズ伝統に漏れず中学二年生の「夏海まなつ」という「今一番大切なことをする」というのが信条の女の子。「トロピカってる」なる独特の口癖を使うが意味的には「良い」とか「イケてる」とかに近いと思われる。

そんな彼女が出会ったのがグランオーシャンという海の中にある移動都市に住む「ローラ」という人魚。彼女の住むグランオーシャンは後回しの魔女(今作の敵対勢力)によりやる気パワーを奪われ壊滅状態に陥っていた。その壊滅状況をなんとかするため打倒後回しの魔女に対する切り札としてローラはグランオーシャンの女王様から名を受け人間界に行きプリキュアになれそうな人材を探すことになる。

しかし、ローラはその使命を全うすることでグランオーシャンの次期女王になるというある種野望を持ちプリキュアとなる人間の事を捨て駒と実際に人間に言ってしまうぐらいとんでもないキャラクター。だが、まなつはそんなローラの力になるべくプリキュアに変身、その後は自身の中学校入学と共にプリキュアになれそうな女の子をローラと探し回り結果的に同級生の「涼村さんご」、二年生の「一ノ瀬みのり」、三年生の「滝沢あすか」プリキュアに勧誘し学内での集まる場所として構内の屋上の部屋を利用し「トロピカル部」という名のある意味万事屋の様な部活動を立ち上げる。学内でも四人とローラが集まる場所を作ったことで各プリキュア達の課題や成長、中学生らしい学生生活、学校でのイベントの提案など放映時期に沿ったイベントを自然に展開することが出来た。

また、物語中盤からローラもプリキュアになることが出来るようになり人魚から人間になる事も可能となった。そこからはローラから見た学校生活を中心に物語が描かれることが多くなったように感じる。仲間との関係性や部活動での学校行事に参加していくことで後半はローラが当初の過激な言動は少なくなり次期王女としての風格さえ出てくるぐらい成長したことが画面越しでも見て取ることが出来た。

 

さて、一方で今回の敵サイドである「後回しの魔女」を中心とした集団だが大将含めて最初から5人固定で新規加入戦士などは出てこない。主な破壊行為として様々な生き物のやる気パワーを奪って望みをかなえる事が主目的というよくある設定。だが、たった5人でグランオーシャンを壊滅状態に追い込むことが出来たのか今考えてみれば少し不明瞭なところもある。なんでこんなことを言うかというと、彼等は今までのプリキュアシリーズの悪役とは少しズレたキャラクターとして描かれており、所謂「悪役」とはなかなかいいづらい部分があったからだ。

最終的な結論から言ってしまえば後回しの魔女の何が後回しなのかというのが最終盤で明らかになるのだが、その理由がプリキュアになった命の恩人と友達になりたかったのでプリキュアと戦う事を後回しにし続けた結果そういう風に呼ばれていたというキャラクターだった。元々は破壊の魔女と呼ばれていたがそれは彼女が生まれた時からの宿命でその事に誰も介入できない存在だったが、命の恩人のやさしさに触れやるべきことを後回しにした結果人間としてのプリキュアは寿命となり自分も後回しにしていたことが何だったのか忘れるほど悠久の時間が経ってしまった。その苦しみから解放されるためにやる気パワーを各地で奪い愚者の棺なる全生物絶滅アイテムを作動させようと魔女は考えていたのだが、それすらも忘却してしまった。

一応今回も魔女との最終決戦的なものはあるにはあるが、思想のぶつかり合いというよりは魔女に昔の事を思い出して欲しいというプリキュアの思いを言語化する説得に近い決戦だったように感じる。その説得のかいあって魔女もかつて友達になりたかったプリキュアと再会し、水の泡となって二人で天に還っていった。魔女の城でコック兼戦闘員として働いていたチョンギーレおじさん、医者兼戦闘員として働いていたヌメリーさん、子ども兼戦闘員(?)として住んでいたエルダちゃんの三人は魔女がいなくなっても「最後に幸せになってよかったのでは?」と悪役とはとてもいえないほのぼのした感じ。唯一執事として魔女に一途だったバトラーさんは魔女の遺志を継ぎ愚者の棺を作動させ世界を破滅に追い込むがまなつ達プリキュアに加え、幹部3人、更にはさっき消えたはずの伝説のプリキュアが巨大化してサンバを踊りながらバトラーさんを浄化。バトラーさんは燃え尽き症候群となるが、チョンギーレさんたちに引き取られる。

 

話が前後してしまったが、本作終盤で「記憶を消す装置」なる物騒な装置がグランオーシャンに存在することが明らかになる。初めは後回しの魔女の企みかと思っていたローラ達だったが、実は自国の物であることが分かる。女王様が言い分としては人間と会った人魚は記憶を消されるのが掟になっているからというらしいが、絶賛人間と交流中のローラにしてみればたまったもんじゃないので何とかしなきゃいけないという課題がローラには課せられることになる。

全ての事が終わってグランオーシャンに帰ることになったローラが行ったこの掟に対しての立ち回りがまぁまぁよく出来ていたので最後はこの事を振り返りたい。

①まず、帰国するにあたり仲間に向けて漠然と何か探し物があるという内容の張り紙を仲間(まなつ)の部屋に置いて帰る。

②グランオーシャンに帰る前にチョンギーレ達に予め自分の記憶が無くなることを説明し、再び自分がチョンギーレ達の住処(魔女の家の廃屋)に来た際にプリキュアとして対峙していたころの話をしてくれと頼みこみ、自分が全てを忘れても記憶をチョンギーレ達に預けておくことを行う。

③帰国後、女王様の元でグランオーシャンの女王候補として勉強している時に目に入る位置に予め後回し魔女が使っていた文字で魔女の城へ行くように記載をする。

 

結果的に上記③を見た後外界に出る用事の際に②に寄ることによって自分に人間界に尋ね人がいる事を知らされることになる。後は①を見た仲間(まなつ)が漠然と海に何かを探しにくればまなつとローラが会うことが出来る。

ただ、これだけでは二人とも記憶がない二人が出会っただけになってしまうので最終兵器アクアポットの出番。アクアポットの機能の一つであるシャボンピクチャーが勝手に起動しローラが来てからの一年間に撮り貯めた写真が二人の間に沢山現れ、その瞬間にアクアポットと記憶を消す装置が整合性を取れなくなり本国の記憶を消す装置が爆発して壊れた。この事により無事グランオーシャンの掟であった記憶の喪失システムはローラの代で消えてゆくだろうし、プリキュアの仲間達との過ごした時間とこれからも過ごす時間も守られて無事大団円になりましたとさ。

 

「初志貫徹、細かいことは捨てていけ!」

 

一応骨組みだけ書き出してみたんだけど、今回の特徴としては特にCPになりそうな男性陣が殆ど出ないと言っていい。主役はおろか他人の恋愛的なエピソードも一切ない。ただ、メンバー5人の性格や課題と解決は今までのシリーズの中でも安定はしていると思う。しばらく専門性が強かったシリーズにおいて中学生という設定をしっかり活かせていたことも今作の特徴かも。

オープニングで敵幹部がダンスを踊っている時点で、あんまり鬱屈した敵とのやり取りはないと判断してよかったねってぐらい敵が所謂「悪」とは違った存在だった。みんな主に仕事の合間にやる気パワーをとってくる感じで彼らも常にやる気が無いと言っていたし、それを補いたいとも思っていなかったのもこの作品の面白い所だなと思いました。

本編で少しだけ気になったことをいくつか……。

滝沢兄はどこに行ったのか?

まなつのお父さんのどうしてもやりたいことってスキューバダイビングでよかったのか?

他にも初期の方で各キャラクターの設定が語られていましたが、そぎ落とした部分も多かったように感じます。でも、本筋から考えれば削ぎ落した部分が致命傷にはならなかったので良かったのですが。

 

最後になりましたが、今回の妖精枠の「くるるん」ちゃん。女王様のペットという立ち位置のアザラシに似たような可愛い妖精。喋れる言葉は「くるるん」のみ。プリキュアのメンバーと意思の疎通が完全に取れているのかはかなりの謎。特に戦闘や話の根幹にかかわる存在でもなくただひたすらに可愛いマスコットとして一年鎮座していて、すごく好きでした。

欲を言えばグランオーシャンの中にある歴代くるるん族の肖像画も謎なんだよなぁ……。

モフルンペコリンくるるんかわいいねかわいいね。