かれんさんは都合のいい女、か

 「水無月かれん」はサンクルミエール学院の生徒会長である。

 知性のプリキュアになるだけあって頭脳明晰、運動神経もよく、その上信じられない規模の資産を有するお嬢様という、SFの世界であるプリキュア5の中にあって最高ランクのチート能力を持つ戦士です。

 しかし……プリキュア5GOGOのラストを見ると、結局一番プリキュアになって恩恵を受けなかったのは「夏木りん」と「水無月かれん」のような気がするのです。

 かれんさんはご存じのとおり、のぞみが「頭がいい人=生徒会長のかれんさん」という構図でスカウトしてきた人です。
 当時のかれんさんは生徒会長でプライドが高いが、人の頼みを断れない性格で膨大な量の生徒会の仕事をほとんど一人でやっていました。
 百合ものであれば完全に「かれんお姉様」と呼べるようなキャラクターでした。

 初めは「生徒会もあるのにプリキュアになって地球を守るなんていうおとぎ話信じられるわけないでしょ」と言っていたのが、唯一の友達であるこまちがプリキュアになった為少しはやる気になるも、実際に変身しようとしたら変身できないという前代未聞の展開に。
 結局かれんさんはプリキュアに変身しますが、この時点ですでにプライドはズタズタです。

 主人公がのぞみである以上当然プリキュアのリーダーになれるはずもなく、そのまま戦いに身を投じていくことになるのですが……。

 いざ5人揃って物語が始まると、プリキュア5の経済力は殆どと言っていいほどかれんに頼りっきり。
 パルミエ住民が人間体で現れたおかげで、人間用の住居を用意しなければならなくなってしまった結果、制作者側もかれんさんをお嬢様にするより方法が無くなってしまったように思います。

 それ以外の資金提供もかれんが中心です。
 プリキュアの親睦を深める為の合宿とかいいつつも、完全にたかりだと言う事に本人たちは気づいているのでしょうか。

 こうなってくると、かれんは何のためにいるのかという話になってくるのですが一応、存在価値はあります。

 まずはこまちと親友だという点。かれんは学園の生徒全員から一目置かれているので、学内に本当に親しい友達というのが全くいなかったようです。そんな彼女に一緒に何かをしようと声をかけてきたのがこまちでした。
 かれんにとってこまちは相当重要な存在で、お勧め回にも彼女たちの出会いのきっかけが挙げられるほどです。しかしながら、こまちはナッツとフラグが立ってしまい、後半はこまちの恋に遠まわしに助言するという役割が中心になってしまいました。

 二つ目は「ミルク」の指南役です。のぞみへの嫉妬から罵詈雑言の限りを尽くしたミルクに対し、他のプリキュアのように対立するのではなく優しく諭すというお姉さん的ポジションを見せました。これも、お勧め回には必ずと言っていいとほど挙げられています。
 本人も頼られるのが心の底では好きなので、ミルクの看病を通じて医者になりたいと言い出すなどこの関係には満足しているよう。


 まぁ、一応は物語の中での役割は割り振られてるわけなのですが……。
 どうもプリキュアチームの中でも最下層のイメージが拭えない……。

 多分、最終的な立ち位置の差なのでしょう、これは。

 のぞみがほぼ神様に近い存在になって、ココと一線を越えるか越え無いかで最終回。

 うららはアイドルや女優への階段を上るというサクセスストーリーがある。シロップという彼氏候補もいます。

 こまちは一生海賊ハリケーン書いてればいい、その度にナッツといい感じになれば問題ないです。

ここまではテンプレ。

 くるみは一般パルミエ人が王族と同等の力を得た時点ですでに勝ち組。残念ながら結局のぞみには勝てませんでしたが。

 りんは仕方がありません、別の機会にでも話したいと思います。
 かれんも仕方がありません。

 ここまで見ると、りんもかれんも同等のような気もしますが、若干違います。
 
 りんとかれんではまず登場の順番が違います。りんはどんなに嫌われていても、のぞみの次にプリキュアになっていますが、かれんは最後です。

 つまり、りんはのぞみしか戦士がいないという危機的状況において「なってくれた」という感情をココに抱かせるキャラクターであるのに対して、かれんは一回変身に失敗してる時点で半ばあきらめムードが……要は「仕方ないから最悪はかれんじゃなくてもいい(増子さんとか)ココ」とか言われる可能性もあったかもしれません。

 この「りんとかれん」に関しては他者(プリキュア以外)からの評価が圧倒的に少ない。評価を下すべき肝心のココとナッツは自分の彼女にご執心ですし。

 今後の事を考えてもりんはのぞみの親友という事でのぞみからの要請があり……という将来も考えられますが、かれんはすでにチートなので何もないと思います。淡々と豊富な資金と知性を発揮し医学部を目指すというSFのプリキュア5の世界の中で一番地味でまっとうな道を選ぶことになってしまったような気がするのです。


 結論としては4人の友達が欲しいばっかりに、生徒会の仕事を放り出してプリキュアになったはいいが、結局資金面でのパトロンになっただけで、メンバー全員が自分より立場が上なってしまったという印象が強いのですがどうでしょうか。


 つーか、ココとナッツにとってかれんさんは本当に都合のいい女だったんだなーと、思いますよ。
 別に今までの妖精みたいにぬいぐるみのフリしてればいいものを、いたずらに人間形態になって自分達の生活基盤を確保させ、本人達は別の女の子に夢中。挙句、かれんさんの親友まで奪う始末。それでのぞみを通じてかれんさんに金を出させるっていうのは、正直褒められたものではないと思いますね、教育番組的にも。